ネタ用倉庫
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
会場は静まり返った。わずか13のエリファスは震えていた。
静寂の中、砂塵が舞い上がり人々は咳き込んでいる音がざわざわと響く。
「エリファス、良く聞け!王は死んでなどいない」
「・・っどういうこと?」
「あれは術者が作り出した空間に閉じ込めておく呪いだ」
「良かった・・・」
その透き通った涙から零れた雫が地に落ちたその刹那、再びその魔法式は発動し始め
閃光がエリファスを包んだ。
「えっ・・・!?」
赤黒い閃光がやがて、人の形を捉えそれはまるでエリファスそのものだった。
「なっ・・・!」
それは、嘲笑を浮かべて消えた・・・
その禁呪は、本でしか読まないくらいの大昔に禁じられた術。
目の当たりにしたのは歴史上初めてであろう。
「アハハハハハハハハハハハh」
それは甲高い笑い声を上げ姿を消した。
あれは数十年前に禁呪に指定されたはず。
あるイカれ狂った魔術師が罪も無い子供やそのお母さんが無差別に殺されていった。
その時に、レヴィー家当主が立ち上がり公平と秩序を守るために煉獄が造られた。
いろんな思いが頭を過ぎったが気を失ったエリファスを抱えて、部屋へと向った。
静寂の中、砂塵が舞い上がり人々は咳き込んでいる音がざわざわと響く。
「エリファス、良く聞け!王は死んでなどいない」
「・・っどういうこと?」
「あれは術者が作り出した空間に閉じ込めておく呪いだ」
「良かった・・・」
その透き通った涙から零れた雫が地に落ちたその刹那、再びその魔法式は発動し始め
閃光がエリファスを包んだ。
「えっ・・・!?」
赤黒い閃光がやがて、人の形を捉えそれはまるでエリファスそのものだった。
「なっ・・・!」
それは、嘲笑を浮かべて消えた・・・
その禁呪は、本でしか読まないくらいの大昔に禁じられた術。
目の当たりにしたのは歴史上初めてであろう。
「アハハハハハハハハハハハh」
それは甲高い笑い声を上げ姿を消した。
あれは数十年前に禁呪に指定されたはず。
あるイカれ狂った魔術師が罪も無い子供やそのお母さんが無差別に殺されていった。
その時に、レヴィー家当主が立ち上がり公平と秩序を守るために煉獄が造られた。
いろんな思いが頭を過ぎったが気を失ったエリファスを抱えて、部屋へと向った。
ヒトはいつだって失うことを恐れながら、
幸せが指の隙間から零れ落ちないようにと無意識に気をつけながら
今を生きる。
年を重ねるほど、色濃くなり
手に入れる快感を忘れられずにまた一つ手を汚していく
その一方、大切なモノがあるヒトには
己を犠牲にしても護りたいと思う。
今日は王子の13歳の誕生日。
不吉な数字ではあるけれど、誕生日ってやっぱうれしい。
王である父上は、国を護るため、繁栄させるためにやることは山ほどある。
教育係のアルモントがいるし、休みの日には父上が遊んでくれたので
不足は無かった。
900世紀と続く家系だからか力が純粋に強すぎてあまり魔術は使わせてくれなかった。
一つ呪文を唱えたなら、どれだけ影響を及ぼすか計り知れない。
練習で瓦礫の山でふさがれた道を爆破して進まそうとしたら、
端が見えないくらい爆破してしまい、使うのを禁止された。
でも、コントロールを覚える練習させてくれないと、こっちも困るんだけどさ。
誕生際で、トラブルを起こしてしまうのも面目ないので、
大人しく父上の隣で腰をかけた。
「調子はどうだ?・・エリファス」
国王でもある父は優しく声をかける。
「コントロールが難しいです。今日も辺り一面を爆破してしまいました」
そう、稀に見る家系の血のせいらしく、
力が強すぎて目は血のごとく赤く、髪は銀色に
身体中に刻まれた900世紀分の回路が力を使うたびに禍々しく浮かび上がる。
「私も半世紀は研究してたのだけれど、答えに辿りつけないんだ」
そう、息子の魔力があまりに強すぎて魔法を使おうもんなら国が滅びかねない。
それを研究してくれているのだ。
「わかってます。緊急時以外は・・」
「私はそろそろ書斎に戻るから後は頼んだぞアルモント」
そう言って父上はその場を後にした。
「仰せのままに」
「エリファス、俺から絶対離れるな」
アルモントの顔に一瞬焦りが見えた。
「ここに居るのはみんな王族じゃないの?」
「皆変わり者だからな、他の血も混ざってるんだ。悪魔の血が・・」
悪魔、それは墜落した天使
罪を犯し地獄へと追放され、なんでも底意地が悪いとかなんとか。
吸血鬼使い、夢魔、すごい種族が混じってるらしい。
中でも、一番厄介なのがラゼータ一族。
レヴィー家と同じ900世紀も続く一族で、太陽を象徴とするレヴィー家とは表裏一体で
その太陽が作り出す陰がラゼータ家だという、そしてこの901を迎える日に、
太陽とその影が交じり合い、災いが起きるのだと・・
真偽は不明だが、家系図にそう記されてるのだからよほどのことがあったのだろう
その頃王、アレイスターは書斎のドアに触れた瞬間、
息子に伝え忘れたことを思い出した。
「そろそろ言わないとな、何故お前の目が赤く、美しい銀色の髪か・・」
踵を返し、宴の広場へと向かう。
そう、エリファスで丁度901世紀、この13歳の誕生式に
レヴィー家の全てを受け継ぐのだ。
そう、悪魔の果たし状のことも。
焦りからか、空間を移動してエリファスの元へと駆けつけた。
「父上?」
「アレイスター?」
かぶった。アルモントとエリファスが同時に言った。
2人はワケがわからず見つめあった。
「実は・・伝え忘れたのだが、ラゼータ家からの果たし状が来た」
「ラゼータ家!!? あのラゼータ家?」
アルモントはエリファスの肩を抱いた。
「・・・ラゼータ家?」
エリファスは首をかしげた。
「ラゼータ家って元は普通の人間だったんだが、数々の悪魔と契約を成し遂げ、900世紀と続く一族だから・」
レヴィー家と同じく900世紀と続く悪魔の家系。
悪魔は、人間の魂を喰らい世界の秩序を保とうとする。
その一方レヴィー家は、全てを司りあらゆる悪を裁く。
魔術師殺し、力をみだりに人間界で使用すること。その他たくさんの罪。
太陽と、闇との表裏一体。
果たしてそれは何を意味するのか、知る術もない
ラゼータ家は、力を欲するあまりにさまざまな種族と血を分け合い
今では、混血のハイエナと呼ばれるようになった。
「だから、簡単に言うとトラブルメーカーなんだ」
アレイスターはエリファスから視線を逸らした。
「それで果たし状には・・なんて?」
「 -アナタノ 愛しい 息子を 殺す- だと」
それで、エリファスは自分が命を狙われてることを知った。
「何の恨みがあって・・そんな・・」
「さっきも言ったけど、力が欲しいがあまりレヴィー家の地位と権限が妬ましいらしくてな」
エリファスは言葉を失った。
13歳になるエリファスには、受け入れるには酷すぎる真実だった。
受け入れられるわけがない。
誕生日の日に自分は命を狙われてると知らされ、
だけど、己に立ち向かう力が無いということ。
「・・・どうしたら、オレ・」
「大丈夫だ!俺が護ってみせるさ・・・分家の奴らになんか負けない」
そう言うとアルモントはエリファスの肩を抱いた。
「とりあえず授与式にはまだ時間がかかるから、アルモント、エリファスから離れるな」
アレイスターは言うだけ言って、その場を後にした。
「俺は、式の準備を見てくる」
姿は消えても、声だけ届くとは流石魔王。
「大丈夫だ!お前だけは命に代えても護ってみせる」
その笑顔が眩しかったと同時に何かが胸をよぎった。
「アルモント死んだら嫌だ・・・」
そうだ・・自分だけ生きてるなんて、死んでるんだ 心が。
微笑みながら、頭を撫でて肩を抱いた。
「大丈夫だ・・」
「皆さん、おまちかねの時間がやってまいりました。
陛下に願いを・・」
歓声の中で、司会者は言った。
「・・アルモント、俺聞いてない」
「エリファスは、ちゃんと聞いてるだけで良いから」
変な輩は、俺が排除する。
そうアルモントはエリファスの耳元でささやいた。
すると、太ったオペラ歌手のような女性が目の前に立ち憚った。
「私からは、美しい歌声を~」
彼女が、喉に触れると赤い光が喉を打った。
(・・っんぐっ!!)
すると自らを回転しながら外の会場へと飛んで逝った。
次に、細身のおばあちゃんだった。
「陛下、私は願いをかける術を持ち合わせて降りませんが、
畑で取れた果物を・・取立てなので是非とも陛下へ」
「では、祭壇へ置いてください」
アルモントがそう促した。
そして、次々と願いをかけにやってきたが13人目
「私からは・・ぃっ・・・呪いの賛歌を!!」
会場が凍りついた瞬間だった。
呪いの賛歌・・・
酔っ払ったこの魔女が、恨み、哀しみ、怒りを悪霊に託して
全てぶちまけたのである。
呪の言霊を発しながら這うように飛び、周りの人々にさまざまな呪をかけてしまうのだ。
-tausend von Randrose-
一瞬の出来事だった。
悪食たちが向かってくる前にアルモントは千の槍で
全てを追い払った。
「っっぃっっく! 流石はレヴィー家の狗め・・それなら」
「よせ! これ以上祭典を邪魔するようなら死を持って報いるが良い」
ドーーーーーーーン
強い音が会場に鳴り響いた。
アレイスターが、魔法で次元を超えて来た。
丁度彼らの前に。
「皆の者静粛に・・・強い魔力を感じたがこれ以上ぶち壊すようなら容赦はせんアビラ・・
それにアルモント、落ち着け」
アルモントは悔しさで唇を噛んだ。
「アンタ、昔からそうよね」
皮肉たっぷりにアビラは答えた。
「お前も相変わらず酒に溺れてるんだな」
バチっ・
Sie müssen zerstört werden
呪文と同時に地面が揺れた。
波打つように揺れ、波に飲まれたものは地中へ引き込まれ死んでしまう。
禁止された魔法である。
激しい音を立てて、地表が割れていく。
叫びと共に飲まれていく。
アルモントはエリファスの前に立ち、エリファスを護っていた。
その時だった。
後先を考えない魔女が世界を変えた瞬間だった。
Schloβ auf
その魔女が呟いた瞬間、エリファスの後ろには魔法式が描かれた。
光がエリファスの全てを飲み込もうとする瞬間、
アレイスターは全身全霊をかけて飛び込んだ。
「エリファスーー!!」
その瞬間、エリファスの身代わりとなりアレイスターは字のごとく
魔法式の中へと呑み込まれてしまった。
一方エリファスは飛ばされた勢いで地面に倒れた。
「・・おとう・・さ・ま・・・・?」
涙が溢れてきた。
どうして、こんなことに・・??
「エリファス! しっかりしろ!」
アルモントはエリファスを強く抱きしめた。
「あのヒトが簡単に死ぬはずは無い」
「あーーーーーっはっはっはっはっはは!!やったわ!あの男が私の手で」
祝いの宴をぶち壊した魔女は狂ったように笑った。
その嘲笑をエリファスは生涯忘れることはできないだろう。
この魔術はゾロアスター教主からラゼータ家へ伝えられた禁呪。
全ての負の力を解放し、全てを周囲にぶつける魔術。
負の力が負を呼び、倍増して周囲に放たれるので
一度当たると死に至る可能性もある。
ゾロアスター教主、生死も不明であるが出生も不明なのだ。
どのような経緯でラゼータ家へ伝えられたかも謎であるが、
ラゼータ家が最も謎が多い一族である。
「目的は果たしたわ、ではごきげんよう」
魔女は嘲笑いながら姿を消した。
幸せが指の隙間から零れ落ちないようにと無意識に気をつけながら
今を生きる。
年を重ねるほど、色濃くなり
手に入れる快感を忘れられずにまた一つ手を汚していく
その一方、大切なモノがあるヒトには
己を犠牲にしても護りたいと思う。
今日は王子の13歳の誕生日。
不吉な数字ではあるけれど、誕生日ってやっぱうれしい。
王である父上は、国を護るため、繁栄させるためにやることは山ほどある。
教育係のアルモントがいるし、休みの日には父上が遊んでくれたので
不足は無かった。
900世紀と続く家系だからか力が純粋に強すぎてあまり魔術は使わせてくれなかった。
一つ呪文を唱えたなら、どれだけ影響を及ぼすか計り知れない。
練習で瓦礫の山でふさがれた道を爆破して進まそうとしたら、
端が見えないくらい爆破してしまい、使うのを禁止された。
でも、コントロールを覚える練習させてくれないと、こっちも困るんだけどさ。
誕生際で、トラブルを起こしてしまうのも面目ないので、
大人しく父上の隣で腰をかけた。
「調子はどうだ?・・エリファス」
国王でもある父は優しく声をかける。
「コントロールが難しいです。今日も辺り一面を爆破してしまいました」
そう、稀に見る家系の血のせいらしく、
力が強すぎて目は血のごとく赤く、髪は銀色に
身体中に刻まれた900世紀分の回路が力を使うたびに禍々しく浮かび上がる。
「私も半世紀は研究してたのだけれど、答えに辿りつけないんだ」
そう、息子の魔力があまりに強すぎて魔法を使おうもんなら国が滅びかねない。
それを研究してくれているのだ。
「わかってます。緊急時以外は・・」
「私はそろそろ書斎に戻るから後は頼んだぞアルモント」
そう言って父上はその場を後にした。
「仰せのままに」
「エリファス、俺から絶対離れるな」
アルモントの顔に一瞬焦りが見えた。
「ここに居るのはみんな王族じゃないの?」
「皆変わり者だからな、他の血も混ざってるんだ。悪魔の血が・・」
悪魔、それは墜落した天使
罪を犯し地獄へと追放され、なんでも底意地が悪いとかなんとか。
吸血鬼使い、夢魔、すごい種族が混じってるらしい。
中でも、一番厄介なのがラゼータ一族。
レヴィー家と同じ900世紀も続く一族で、太陽を象徴とするレヴィー家とは表裏一体で
その太陽が作り出す陰がラゼータ家だという、そしてこの901を迎える日に、
太陽とその影が交じり合い、災いが起きるのだと・・
真偽は不明だが、家系図にそう記されてるのだからよほどのことがあったのだろう
その頃王、アレイスターは書斎のドアに触れた瞬間、
息子に伝え忘れたことを思い出した。
「そろそろ言わないとな、何故お前の目が赤く、美しい銀色の髪か・・」
踵を返し、宴の広場へと向かう。
そう、エリファスで丁度901世紀、この13歳の誕生式に
レヴィー家の全てを受け継ぐのだ。
そう、悪魔の果たし状のことも。
焦りからか、空間を移動してエリファスの元へと駆けつけた。
「父上?」
「アレイスター?」
かぶった。アルモントとエリファスが同時に言った。
2人はワケがわからず見つめあった。
「実は・・伝え忘れたのだが、ラゼータ家からの果たし状が来た」
「ラゼータ家!!? あのラゼータ家?」
アルモントはエリファスの肩を抱いた。
「・・・ラゼータ家?」
エリファスは首をかしげた。
「ラゼータ家って元は普通の人間だったんだが、数々の悪魔と契約を成し遂げ、900世紀と続く一族だから・」
レヴィー家と同じく900世紀と続く悪魔の家系。
悪魔は、人間の魂を喰らい世界の秩序を保とうとする。
その一方レヴィー家は、全てを司りあらゆる悪を裁く。
魔術師殺し、力をみだりに人間界で使用すること。その他たくさんの罪。
太陽と、闇との表裏一体。
果たしてそれは何を意味するのか、知る術もない
ラゼータ家は、力を欲するあまりにさまざまな種族と血を分け合い
今では、混血のハイエナと呼ばれるようになった。
「だから、簡単に言うとトラブルメーカーなんだ」
アレイスターはエリファスから視線を逸らした。
「それで果たし状には・・なんて?」
「 -アナタノ 愛しい 息子を 殺す- だと」
それで、エリファスは自分が命を狙われてることを知った。
「何の恨みがあって・・そんな・・」
「さっきも言ったけど、力が欲しいがあまりレヴィー家の地位と権限が妬ましいらしくてな」
エリファスは言葉を失った。
13歳になるエリファスには、受け入れるには酷すぎる真実だった。
受け入れられるわけがない。
誕生日の日に自分は命を狙われてると知らされ、
だけど、己に立ち向かう力が無いということ。
「・・・どうしたら、オレ・」
「大丈夫だ!俺が護ってみせるさ・・・分家の奴らになんか負けない」
そう言うとアルモントはエリファスの肩を抱いた。
「とりあえず授与式にはまだ時間がかかるから、アルモント、エリファスから離れるな」
アレイスターは言うだけ言って、その場を後にした。
「俺は、式の準備を見てくる」
姿は消えても、声だけ届くとは流石魔王。
「大丈夫だ!お前だけは命に代えても護ってみせる」
その笑顔が眩しかったと同時に何かが胸をよぎった。
「アルモント死んだら嫌だ・・・」
そうだ・・自分だけ生きてるなんて、死んでるんだ 心が。
微笑みながら、頭を撫でて肩を抱いた。
「大丈夫だ・・」
「皆さん、おまちかねの時間がやってまいりました。
陛下に願いを・・」
歓声の中で、司会者は言った。
「・・アルモント、俺聞いてない」
「エリファスは、ちゃんと聞いてるだけで良いから」
変な輩は、俺が排除する。
そうアルモントはエリファスの耳元でささやいた。
すると、太ったオペラ歌手のような女性が目の前に立ち憚った。
「私からは、美しい歌声を~」
彼女が、喉に触れると赤い光が喉を打った。
(・・っんぐっ!!)
すると自らを回転しながら外の会場へと飛んで逝った。
次に、細身のおばあちゃんだった。
「陛下、私は願いをかける術を持ち合わせて降りませんが、
畑で取れた果物を・・取立てなので是非とも陛下へ」
「では、祭壇へ置いてください」
アルモントがそう促した。
そして、次々と願いをかけにやってきたが13人目
「私からは・・ぃっ・・・呪いの賛歌を!!」
会場が凍りついた瞬間だった。
呪いの賛歌・・・
酔っ払ったこの魔女が、恨み、哀しみ、怒りを悪霊に託して
全てぶちまけたのである。
呪の言霊を発しながら這うように飛び、周りの人々にさまざまな呪をかけてしまうのだ。
-tausend von Randrose-
一瞬の出来事だった。
悪食たちが向かってくる前にアルモントは千の槍で
全てを追い払った。
「っっぃっっく! 流石はレヴィー家の狗め・・それなら」
「よせ! これ以上祭典を邪魔するようなら死を持って報いるが良い」
ドーーーーーーーン
強い音が会場に鳴り響いた。
アレイスターが、魔法で次元を超えて来た。
丁度彼らの前に。
「皆の者静粛に・・・強い魔力を感じたがこれ以上ぶち壊すようなら容赦はせんアビラ・・
それにアルモント、落ち着け」
アルモントは悔しさで唇を噛んだ。
「アンタ、昔からそうよね」
皮肉たっぷりにアビラは答えた。
「お前も相変わらず酒に溺れてるんだな」
バチっ・
Sie müssen zerstört werden
呪文と同時に地面が揺れた。
波打つように揺れ、波に飲まれたものは地中へ引き込まれ死んでしまう。
禁止された魔法である。
激しい音を立てて、地表が割れていく。
叫びと共に飲まれていく。
アルモントはエリファスの前に立ち、エリファスを護っていた。
その時だった。
後先を考えない魔女が世界を変えた瞬間だった。
Schloβ auf
その魔女が呟いた瞬間、エリファスの後ろには魔法式が描かれた。
光がエリファスの全てを飲み込もうとする瞬間、
アレイスターは全身全霊をかけて飛び込んだ。
「エリファスーー!!」
その瞬間、エリファスの身代わりとなりアレイスターは字のごとく
魔法式の中へと呑み込まれてしまった。
一方エリファスは飛ばされた勢いで地面に倒れた。
「・・おとう・・さ・ま・・・・?」
涙が溢れてきた。
どうして、こんなことに・・??
「エリファス! しっかりしろ!」
アルモントはエリファスを強く抱きしめた。
「あのヒトが簡単に死ぬはずは無い」
「あーーーーーっはっはっはっはっはは!!やったわ!あの男が私の手で」
祝いの宴をぶち壊した魔女は狂ったように笑った。
その嘲笑をエリファスは生涯忘れることはできないだろう。
この魔術はゾロアスター教主からラゼータ家へ伝えられた禁呪。
全ての負の力を解放し、全てを周囲にぶつける魔術。
負の力が負を呼び、倍増して周囲に放たれるので
一度当たると死に至る可能性もある。
ゾロアスター教主、生死も不明であるが出生も不明なのだ。
どのような経緯でラゼータ家へ伝えられたかも謎であるが、
ラゼータ家が最も謎が多い一族である。
「目的は果たしたわ、ではごきげんよう」
魔女は嘲笑いながら姿を消した。
ある事故をきっかけに父上が変わった。
何万世紀もの時代を経て神々の代から受け継がれてきた力は、
もはやそれ自体が神の域へと達していた。
悪い輩を煉獄へと送るという制度を築きあげ
国王という地位を得たレヴィー家のもとに脅迫状が届いた。
-アナタノ 愛しい 息子を 殺す-
この国ではもちろんレヴィー家以外に100年と続いた家柄は無いので
国王自身もさほど気にすることはなかった。
魔術とは血を重ねれば重ねるほど強くなるモノ。
900世紀と続いてきたレヴィー家の右を行くモノなど誰もいやしない。
愛息子のエリファスの13歳の誕生際に
ある魔女が王とその息子を呪おうとした瞬間、王は息子を護るために
呪いを受けてしまった。
通常であれば魔眼だけで跳ね返せるものの、相手が悪かった。
悪魔族のラゼータ一族だった。
レヴィー家とはライバルにあたる一族で、
彼らもまた900世紀とつづく名門の家柄なのである。
「やはりアナタは甘い・・アレイスター」
それから王は変わってしまった。
貪欲に、冷酷で、残酷なまでに他人の幸せを最も嫌い、
王は暴走してしまった。
王の地位を揺るがすモノは誰もいなかった。
世は混乱に陥り、やがて同じ民族同士で肩を寄せ合うように
集まり始め、4つの国ができた。
クリフォト、バールセフォン、サルバトス、プリシンパリティーズ
そして優しかった父を失った王の息子は
哀しみの果てに自らの魂を分裂させてしまったのだ。
優しい心と、邪悪な心に。
離れ行く心と、すれ違う思いは王の息子、エリファスを追い詰めていく。
外は暗くなり始め、空は徐々に黒に染まってきた。
今にも雨が降りそうだ。雨はいい。
何もかもを流して忘れさせてくれる・・そんな気がしてた。
誰も理解ってくれない。
胸に空いた大きな穴は埋まることなく、
己を中心から呑み込むように、
何も見えなくなりそうな、僕だけが知ってる暗い、暗い何も無い世界。
暗くて何も見えないから、周りの冷たい雨も感じない。
何も感じなくて、ただ時間が流れてくとともに
何かを失っていくようで
孤独は、ゆっくりと確かに蝕んでいく。希望も、涙も、心でさえも。
何の為にヒトは生きるのだろう?
この豊かな大地に包まれ、穏やかな風が吹き、
夜には綺麗な星たちに囲まれ、
こんなにも美しい世界が、ヒトの手で崩れてく。
気づけないほどに音も無く
黒い月は侵食していき、あらゆる光を呑み込むかのように
闇は訪れた。
幸せな時間はどうしてこうも早く過ぎていってしまうのか、
多くの兵を率いて、敗北をしらないレヴィー家の当主がある日突然病に倒れ、
寝たきりになってしまった。
まだ大人というには若く、子供というには大きくなった青年は
この世に生れ落ちたときから魔術(ちから)を受け継いだ。
身体に刻まれたレヴィー家の紋章とともに。
赤子のころから左手の甲に刻まれた紋章は、900世紀代々から受け継がれた魔術を
思うがままに操ることができるのだ。
その青年、アレイスターはそれを教わらずに人間として育てられてきた。
当主は精神的にも、年齢的にも落ち着いた歳頃に魔術を教え始めないと
小さい頃は思うがままに力を発揮してしまうと、何百世紀とも続いてきた
レヴィー家の血筋が途絶えてしまう可能性もある。
だから、幼い頃から魔術を習うというのはよほど精神的にも、
肉体的にもよほど強い力で縛られたのだろう。
そういった人は、真実を知った時に今までの縛りが解け、
心は不安定に陥り、安定した精神(こころ)を持ち得ないヒトは、
あまりに純粋すぎて、善悪の境界線などなく
感情を抑えきれずに、暴走して肉親でさえも殺してしまうのだ。
それはどんなに血を重ねて築き上げた名門の一族でさえ例外は無い。
問題がひとつ、アレイスターは魔術を教わる前に実の父である
レヴィー家の当主がこの世を去ろうとしているのだ。
母親は彼が生まれると同時に他界してしまったのだ。
人間として生きるのだと・・
幼かったアレイスターには母がどこで何してるか、
他界した理由など知るはずもなく、
身内などいない。
生まれてからずっと城の外に出たことの無い彼には、
友人でさえいなかった。
王族であるためでもあるが、時期王として
専属の教師が何人もいたのだ。
世界に働きかける魔術は、時に死を招くこともある。
子供の悪ふざけで、時期王を死なせるワケにはいかない。
やがて900世紀になるレヴィー家の証をそんな事で、
途絶えさせては、先祖様たちに合わせる顔が無い。
だが900世紀も血を重ねてきたレヴィー家では、
形と成り、魔術式が神経と同調しているため力を発揮するときには、
表面上に浮かび上がるのだ。
「アレイスター、お前にはまだいろいろ・・・」
それだけの言葉を残して、レヴィー家当主は他界してしまい、
アレイスターには城と、莫大な遺産が残された。
大人というには少しばかり早い彼には王としては
まだ未熟だった。
城に出たこともなければ、友達も居ない。
城の外のことも何ひとつ知らないのだ。
王の死は民にとっても、アレイスター自身にとっても不幸の序章にすぎなかった。
今まで使えてた召使や、教師たちは全員辞めてどこかの一族へふんぞり返ってしまったのだ。
残ったのは、アレイスターと執事のスコーチェだけだった。
スコーチェは先代の王に従順だった。
それは昔、まだアレイスターが生まれる前の話。
吸血鬼使い、魔法使いであり吸血鬼でもある彼らはブリコカラスと呼ばれ、
魔法を駆使し、また尋常じゃないスピードと跳躍力を持ち、マントで空を飛ぶ集団なのだ。
レヴィー家のように、900世紀も続く一族ならベツとして
よほど高潔なヒトでないと彼らには言葉や呪文など通じやしない。
スコーチェはいつも父に怒られて部屋で泣いている
アレイスターの気持ちを唯一知る人物だったのだ。
ベッドの上で、枕を抱きしめながら泣いている姿が
不憫に思えて、いつも昔話をしていた。
スコーチェの人生の分かれ道の話で、
まだ幼い頃のある日、些細な事で両親とケンカなんてして飛び出した。
何も考えず感情に身を委ねて、全力で駆け出した。
泣きながら、後先も考えずに飛び出したスコーチェは息を切らしながら
樹にもたれかかった。
腰を下ろし、あふれ出す涙を止めようと泣いていた。
陽はとっくに沈み、時刻は日付が変わろうとしていた。
気が付くと、家は見えないほど走って深い森の中に一人で
どうしようもなかった。
戻る力など残ってなくて、道はわからなくて
ただ、樹にもたれかかって陽が昇るのをまつだけだった・・
家を飛び出してどのくらいたったのだろう、そんな言を考えてる時に
首筋に違和感を感じた。何かヌメっとした感じだった・・
ふと振り向くと化け物が自分の首筋を長い舌で舐めていたらしい。
怖さのあまりに声を失った。
叫ぶことさえできない。
抵抗する力さえなかった。
「こんなところで何をしてるんだいおチビちゃん♪」
低い声で化け物はそう言った。
「うっ・・・」
怖くて体は震え、抗うこともできずにただ見てるしかできなかった。
暗い森の中でも、彼らの尖った歯は光って見えた。
気が付けば、闇雲に走って禁断の森へ、トワルヴァードの森へ来てしまったらしい。
夜は大人でも危ないと言われるこの危険地帯。
誰が彼を助けるなんてできただろう?
人通りなどなく、両親はすぐ帰ってくるだろうと気にもとめなかっただろう。
「ヒッ・・どうせ家出でもしたんだろ?」
意外だった。
吸血鬼使いは近づけば血を吸われて死ぬとか
目が合った瞬間殺されるとかいうことをずっと聞かされてた。
この目の前にいる吸血鬼使いは、殺気など無かった。
だが、帰す気も無いらしい。
ワケがわからず首をかしげた。
すると、こっちを真似するようにあっちも首をかしげた。
「・・おじさん血を吸って僕を殺そうとしたんじゃ?」
直球で聞いてしまった。
己の馬鹿さ加減に気づいて、顔を背けた。
そっと彼の指が触れた。前髪を上げ、真っ直ぐに見つめてきた。
「殺すのは相手が憎いときだけだ・・坊主、死にてぇのか?」
何も言わず首を横に振った。
「それに俺はお兄さんだ。まだ若い」
そう言うと急に手を引いて歩きだした。
ワケがわからんが、こんなトワルヴァードの森(世界一危険な森)に一人では心細いので、
付いてくことにした。
両親は教育を強いる人だった。
日々、アレをしろ、これをしろだの命令される日々に嫌気がさして
反抗したのだ。好きなことをするのは何がいけないのだと。
その当時は、学歴社会だったからかどの子供も学業はもちろん他の技術を身につけさせようと
世界中の親は教育熱心になってたのだ。
ある夜父が突然、「お前は俺の言うことに従っていれば良い」
という言葉にカチンときたのだ。
もうたくさんだ!そう言って家を飛び出した。
今になって考えれば、それは偶然が結び寄せた運命なんだろうか。
それは知らないが、もしあの時声をかけられなかったら、また
違う道をたどっていただろう。
「今日は遅いし、疲れただろう、ハチミツレモンだ」
家に着くなり、彼はハチミツレモンを差し出した。
別名:死の森とも言われるトワルヴァードの森はかなり寒いため
身体が芯からあったまった。
蜂蜜レモンをサイドテーブルに置いて男は訊ねた。
「俺ぁジョージ・コンスタンス、坊主は?」
「スコーチェ・ストロベルト・・」
己が名前を口にした時、両親の顔がふと浮かんだが彼が名乗ったので振り払った。
この世界で名前を名乗るということは敵意が無いという意味だ。
窓越しから見える暖かい家族に
寂しさを感じて、うつ向いて考え込んでいたら
ふと肩から温もりを感じた。
ジョージと名乗る男は、スコーチェを包み込むかのように肩に手を置いた。
「お前が家を飛び出した理由なんて聞かねぇが、ここには好きなだけ居るといい」
このとき、なぜこんなにも優しくされるのかなんて、知る術は無かった。
知らなければよかったのかもしれない。
けど友達すらいなかったスコーチェには初めての事だったから
戸惑いを隠せなかった。
「ありがとう・・」
そう、このジョージ・コンスタンス(仮名)こそが、先代の王、ジョージ・C・レヴィだったのだ。
王という名称に相応しい人物で、実力も、戦力も、信頼も、威厳もすべてが王と言うべく揃っていた。
ただ変人というところを除いては。
すべての元素を司り、世界を造る唯一の存在、それが王。
国を脅かす輩には刃を、民には愛を。それが彼のポリシーだったらしい。
あまりに極端なので、彼を理解できるのはスコーチェしかいなかった。
すべてを自由に操るモノと、すべてを操られたモノは相性が良い。
トワルヴァードの森で救われたあの日から、スコーチェは両親と会うことはなかった。
王によってすべてを満たされていたのだから会う必要なんてこれっぽっちも無かったのだ
王は己を救ってくれた存在なのだと、彼の血を受け継いだアレイスターなら
彼のように強くあって欲しいと幼い頃から語り聞かせていたのだ。
まだ雨が降っていた。
どんなに強いヒトでも、老いには勝てないようで
王は、実の息子であるアレイスターに全てを託そうと決意した。
この力も、この地位も、この血を全てを。
レヴィー家には力を護るため、世界の秩序を護るために設けた泉があった。
水は唯一、あらゆる世界を繋げることが出来る礎となり、
世代交代の儀式は、受け継ぐモノにも、授けるモノにも死に近い痛みを伴う。
だから、全てを託すとヒトは死を迎えてしまうのだ。
たとえ王族であろうとも。
息子であるアレイスターが13回目の誕生日にその儀式は行われた。
家宝である儀式用の短剣で力を流動させるために魔法式が描かれた。
そしてこの世界で唯一、あらゆる世界を繋ぐレヴィー家の泉の正面にアレイスターは十字架に繋がれた。
死に近い痛みを伴うとヒトは、想像を絶する力を発揮する。
それは抗うためなのか・・
それはまるで神が託した最後の手なのか・
縛られたアレイスターと正対する像は、十字架に彼の血管で縛れていた。
魔力で育まれた強靭な血管は、休息を許さないかのように彼を縛りつける。
その間に描かれた魔法式はレヴィー家の家紋を基調とし、
刃の矛先がアレイスターを向いていた。
900世紀も受け継がれてきたこの短剣で、王は首を刺した。
首から身体を滴る血が、魔法式をなぞるように光を帯び始めた。
今にも雨が降りそうだ。雨はいい。
何もかもを流して忘れさせてくれる・・そんな気がしてた。
誰も理解ってくれない。
胸に空いた大きな穴は埋まることなく、
己を中心から呑み込むように、
何も見えなくなりそうな、僕だけが知ってる暗い、暗い何も無い世界。
暗くて何も見えないから、周りの冷たい雨も感じない。
何も感じなくて、ただ時間が流れてくとともに
何かを失っていくようで
孤独は、ゆっくりと確かに蝕んでいく。希望も、涙も、心でさえも。
何の為にヒトは生きるのだろう?
この豊かな大地に包まれ、穏やかな風が吹き、
夜には綺麗な星たちに囲まれ、
こんなにも美しい世界が、ヒトの手で崩れてく。
気づけないほどに音も無く
黒い月は侵食していき、あらゆる光を呑み込むかのように
闇は訪れた。
幸せな時間はどうしてこうも早く過ぎていってしまうのか、
多くの兵を率いて、敗北をしらないレヴィー家の当主がある日突然病に倒れ、
寝たきりになってしまった。
まだ大人というには若く、子供というには大きくなった青年は
この世に生れ落ちたときから魔術(ちから)を受け継いだ。
身体に刻まれたレヴィー家の紋章とともに。
赤子のころから左手の甲に刻まれた紋章は、900世紀代々から受け継がれた魔術を
思うがままに操ることができるのだ。
その青年、アレイスターはそれを教わらずに人間として育てられてきた。
当主は精神的にも、年齢的にも落ち着いた歳頃に魔術を教え始めないと
小さい頃は思うがままに力を発揮してしまうと、何百世紀とも続いてきた
レヴィー家の血筋が途絶えてしまう可能性もある。
だから、幼い頃から魔術を習うというのはよほど精神的にも、
肉体的にもよほど強い力で縛られたのだろう。
そういった人は、真実を知った時に今までの縛りが解け、
心は不安定に陥り、安定した精神(こころ)を持ち得ないヒトは、
あまりに純粋すぎて、善悪の境界線などなく
感情を抑えきれずに、暴走して肉親でさえも殺してしまうのだ。
それはどんなに血を重ねて築き上げた名門の一族でさえ例外は無い。
問題がひとつ、アレイスターは魔術を教わる前に実の父である
レヴィー家の当主がこの世を去ろうとしているのだ。
母親は彼が生まれると同時に他界してしまったのだ。
人間として生きるのだと・・
幼かったアレイスターには母がどこで何してるか、
他界した理由など知るはずもなく、
身内などいない。
生まれてからずっと城の外に出たことの無い彼には、
友人でさえいなかった。
王族であるためでもあるが、時期王として
専属の教師が何人もいたのだ。
世界に働きかける魔術は、時に死を招くこともある。
子供の悪ふざけで、時期王を死なせるワケにはいかない。
やがて900世紀になるレヴィー家の証をそんな事で、
途絶えさせては、先祖様たちに合わせる顔が無い。
だが900世紀も血を重ねてきたレヴィー家では、
形と成り、魔術式が神経と同調しているため力を発揮するときには、
表面上に浮かび上がるのだ。
「アレイスター、お前にはまだいろいろ・・・」
それだけの言葉を残して、レヴィー家当主は他界してしまい、
アレイスターには城と、莫大な遺産が残された。
大人というには少しばかり早い彼には王としては
まだ未熟だった。
城に出たこともなければ、友達も居ない。
城の外のことも何ひとつ知らないのだ。
王の死は民にとっても、アレイスター自身にとっても不幸の序章にすぎなかった。
今まで使えてた召使や、教師たちは全員辞めてどこかの一族へふんぞり返ってしまったのだ。
残ったのは、アレイスターと執事のスコーチェだけだった。
スコーチェは先代の王に従順だった。
それは昔、まだアレイスターが生まれる前の話。
吸血鬼使い、魔法使いであり吸血鬼でもある彼らはブリコカラスと呼ばれ、
魔法を駆使し、また尋常じゃないスピードと跳躍力を持ち、マントで空を飛ぶ集団なのだ。
レヴィー家のように、900世紀も続く一族ならベツとして
よほど高潔なヒトでないと彼らには言葉や呪文など通じやしない。
スコーチェはいつも父に怒られて部屋で泣いている
アレイスターの気持ちを唯一知る人物だったのだ。
ベッドの上で、枕を抱きしめながら泣いている姿が
不憫に思えて、いつも昔話をしていた。
スコーチェの人生の分かれ道の話で、
まだ幼い頃のある日、些細な事で両親とケンカなんてして飛び出した。
何も考えず感情に身を委ねて、全力で駆け出した。
泣きながら、後先も考えずに飛び出したスコーチェは息を切らしながら
樹にもたれかかった。
腰を下ろし、あふれ出す涙を止めようと泣いていた。
陽はとっくに沈み、時刻は日付が変わろうとしていた。
気が付くと、家は見えないほど走って深い森の中に一人で
どうしようもなかった。
戻る力など残ってなくて、道はわからなくて
ただ、樹にもたれかかって陽が昇るのをまつだけだった・・
家を飛び出してどのくらいたったのだろう、そんな言を考えてる時に
首筋に違和感を感じた。何かヌメっとした感じだった・・
ふと振り向くと化け物が自分の首筋を長い舌で舐めていたらしい。
怖さのあまりに声を失った。
叫ぶことさえできない。
抵抗する力さえなかった。
「こんなところで何をしてるんだいおチビちゃん♪」
低い声で化け物はそう言った。
「うっ・・・」
怖くて体は震え、抗うこともできずにただ見てるしかできなかった。
暗い森の中でも、彼らの尖った歯は光って見えた。
気が付けば、闇雲に走って禁断の森へ、トワルヴァードの森へ来てしまったらしい。
夜は大人でも危ないと言われるこの危険地帯。
誰が彼を助けるなんてできただろう?
人通りなどなく、両親はすぐ帰ってくるだろうと気にもとめなかっただろう。
「ヒッ・・どうせ家出でもしたんだろ?」
意外だった。
吸血鬼使いは近づけば血を吸われて死ぬとか
目が合った瞬間殺されるとかいうことをずっと聞かされてた。
この目の前にいる吸血鬼使いは、殺気など無かった。
だが、帰す気も無いらしい。
ワケがわからず首をかしげた。
すると、こっちを真似するようにあっちも首をかしげた。
「・・おじさん血を吸って僕を殺そうとしたんじゃ?」
直球で聞いてしまった。
己の馬鹿さ加減に気づいて、顔を背けた。
そっと彼の指が触れた。前髪を上げ、真っ直ぐに見つめてきた。
「殺すのは相手が憎いときだけだ・・坊主、死にてぇのか?」
何も言わず首を横に振った。
「それに俺はお兄さんだ。まだ若い」
そう言うと急に手を引いて歩きだした。
ワケがわからんが、こんなトワルヴァードの森(世界一危険な森)に一人では心細いので、
付いてくことにした。
両親は教育を強いる人だった。
日々、アレをしろ、これをしろだの命令される日々に嫌気がさして
反抗したのだ。好きなことをするのは何がいけないのだと。
その当時は、学歴社会だったからかどの子供も学業はもちろん他の技術を身につけさせようと
世界中の親は教育熱心になってたのだ。
ある夜父が突然、「お前は俺の言うことに従っていれば良い」
という言葉にカチンときたのだ。
もうたくさんだ!そう言って家を飛び出した。
今になって考えれば、それは偶然が結び寄せた運命なんだろうか。
それは知らないが、もしあの時声をかけられなかったら、また
違う道をたどっていただろう。
「今日は遅いし、疲れただろう、ハチミツレモンだ」
家に着くなり、彼はハチミツレモンを差し出した。
別名:死の森とも言われるトワルヴァードの森はかなり寒いため
身体が芯からあったまった。
蜂蜜レモンをサイドテーブルに置いて男は訊ねた。
「俺ぁジョージ・コンスタンス、坊主は?」
「スコーチェ・ストロベルト・・」
己が名前を口にした時、両親の顔がふと浮かんだが彼が名乗ったので振り払った。
この世界で名前を名乗るということは敵意が無いという意味だ。
窓越しから見える暖かい家族に
寂しさを感じて、うつ向いて考え込んでいたら
ふと肩から温もりを感じた。
ジョージと名乗る男は、スコーチェを包み込むかのように肩に手を置いた。
「お前が家を飛び出した理由なんて聞かねぇが、ここには好きなだけ居るといい」
このとき、なぜこんなにも優しくされるのかなんて、知る術は無かった。
知らなければよかったのかもしれない。
けど友達すらいなかったスコーチェには初めての事だったから
戸惑いを隠せなかった。
「ありがとう・・」
そう、このジョージ・コンスタンス(仮名)こそが、先代の王、ジョージ・C・レヴィだったのだ。
王という名称に相応しい人物で、実力も、戦力も、信頼も、威厳もすべてが王と言うべく揃っていた。
ただ変人というところを除いては。
すべての元素を司り、世界を造る唯一の存在、それが王。
国を脅かす輩には刃を、民には愛を。それが彼のポリシーだったらしい。
あまりに極端なので、彼を理解できるのはスコーチェしかいなかった。
すべてを自由に操るモノと、すべてを操られたモノは相性が良い。
トワルヴァードの森で救われたあの日から、スコーチェは両親と会うことはなかった。
王によってすべてを満たされていたのだから会う必要なんてこれっぽっちも無かったのだ
王は己を救ってくれた存在なのだと、彼の血を受け継いだアレイスターなら
彼のように強くあって欲しいと幼い頃から語り聞かせていたのだ。
まだ雨が降っていた。
どんなに強いヒトでも、老いには勝てないようで
王は、実の息子であるアレイスターに全てを託そうと決意した。
この力も、この地位も、この血を全てを。
レヴィー家には力を護るため、世界の秩序を護るために設けた泉があった。
水は唯一、あらゆる世界を繋げることが出来る礎となり、
世代交代の儀式は、受け継ぐモノにも、授けるモノにも死に近い痛みを伴う。
だから、全てを託すとヒトは死を迎えてしまうのだ。
たとえ王族であろうとも。
息子であるアレイスターが13回目の誕生日にその儀式は行われた。
家宝である儀式用の短剣で力を流動させるために魔法式が描かれた。
そしてこの世界で唯一、あらゆる世界を繋ぐレヴィー家の泉の正面にアレイスターは十字架に繋がれた。
死に近い痛みを伴うとヒトは、想像を絶する力を発揮する。
それは抗うためなのか・・
それはまるで神が託した最後の手なのか・
縛られたアレイスターと正対する像は、十字架に彼の血管で縛れていた。
魔力で育まれた強靭な血管は、休息を許さないかのように彼を縛りつける。
その間に描かれた魔法式はレヴィー家の家紋を基調とし、
刃の矛先がアレイスターを向いていた。
900世紀も受け継がれてきたこの短剣で、王は首を刺した。
首から身体を滴る血が、魔法式をなぞるように光を帯び始めた。
